中国語で情報誌をデザインする。
みなさまこんにちは、デザイナーのばたやんです。
今回は、台湾で情報誌のデザインに携わっていた頃の思い出話などしてみようかと思います。
1999年に創刊、昨年20周年を迎えた「TaipeiWalker」。日本で発刊されているWalkerシリーズのブランドイメージや編集方針を踏襲するため、創刊からある時期までは、日本からも編集スタッフやデザイナーを派遣していたのです。
台湾現地のスタッフと力を合わせ、時には考え方の違いに頭を悩ませながら、週刊誌制作の多忙な日々をともに乗り越えた経験は、今となってはよい思い出です。当時の同僚たちは、いまも家族のように連絡を取り合う友となりました。
現地に赴いて実際にレイアウト作業をするなかで、私がもっとも苦労したのは(同じように作っているのに、なぜか誌面が垢抜けない…?)ということでした。現地のタレントさん、モデルさんたちがサービス精神旺盛で、表情やポーズをこってり盛り盛りに作ってくれる、というのもありましたが(苦笑)。それ以上に、誌面の印象を左右したのは「文字のかたち」だったのではないかと思います。
たとえば英字新聞を包装紙にアレンジするなど、私たちは欧文の字組をなんとなく「洒落ている」「洗練されている」などと感じます。大文字小文字が入り混じっていたり、単語間のスペースなどにより「ランダムな空間」が生じるため、それらが心地よい揺らぎ、ヌケ感となっているのではないでしょうか。
一方、日本語は漢字が混じっているため、文字組は、英文よりもかっちりとした「面」に見えます。それでも、かなが混じっていることで、面の中にも不規則な濃淡、揺らぎが生まれます。
ところが、全てを全角の漢字で表現する中国語、特に画数の多い繁体中国語を使用する台湾においては、見出しや本文など、文字を並べたところは一律にべったりとした「面」に見えてしまいます。見出しを上から垂らしたりする際も、仮名で終わる日本語と違い、フェードアウトっぽい「抜け」を使うことができません。字組によるグリッドが強く出てしまうため、どうしてもカクカクとした印象になってしまいます。特に情報誌は文字が多いので、全体の雰囲気にかなり影響します。
回避策として曲線の多い明朝体を使えば、溢れ出すオリエンタル感、クラシック感……。そうしたデザインの方向性を狙いたいときは良いのですが、ガーリーな柔らかい感じ、ナチュラルに淡いトーンを狙いたいとき、またはテクノっぽいクールな感じを出したいときなどは、いつも頭を抱えていました。細ゴシック体、丸ゴシック体を使ったり、色みでトーンを和らげたりと工夫していましたが、それでも狙ったよりも2割増しくらい「濃い」結果になることが多かったように思います(涙)。
タイプフェイスの持つ印象がデザインに及ぼす影響というものを、痛感する日々でした。
また、漢字は一文字の中に意味を含んでいるため、日本語の原稿を元にレイアウトを組んで、出来上がって来た翻訳原稿を反映したところ、半分から3分の1の文字量になってしまう(!)ということもよくありました。レイアウトスペースに合わせて原稿量を増減する(先割り)という考え方も現地では一般的でなかったため、ライターさんと「もっと文字数が欲しい!」「無理!できない!」という押し問答の末、徹夜でレイアウトを組み直す……という羽目に陥ることも。
いやはや、当たり前に日本語だけで仕事をしていたときには、思いつきもしなかったようなトラブルというのがあるものです。
もしもハングルやタイ語などでデザインすることになったら、一体何が起きるんだろう? ……戦々兢々としながらも、興味津々な自分がいるのでした。
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