わたし的「バイブル」を紹介する Vol.06
デザイナーのimaiです。
今回紹介するバイブルは
マリオ・プーゾ『ゴッドファーザー』
初めてこの作品に触れたのはいつだったか……
私が子どもだった頃、年末には決まって「忠臣蔵」が放送され、年が明けると必ずといって良いほど放送されていた傑作映画、それが「ゴッドファーザー」である。
原作マリオ・プーゾ。名匠フランシス・フォード・コッポラによって、全3部作で映像化されたこのサーガは総上映時間547分、実に9時間を超える超大作で、コタツを囲むわが家の正月に彩り(?)を添えていた。
幼かった私には話も分からなければ登場人物の区別もつかず、ずいぶんと長い映画だなぁ……という程度の認識しか無かった。ただ唐突に、出現する殺人や馬の首などのショッキングなシーンが幼心に深く刻み込まれたのか、本来の楽しみ方とは異なる期待に胸を踊らせ、画面を眺めていたのを覚えている。
そんな正月を繰り返すこと、十数年……自然と人物も見分けられるようになり、いつしか、これはニューヨーク5大マフィアの一角を担う「コルレオーネ・ファミリー」の物語なのだと理解できるようになっていく。
ゴッドファーザーシリーズの魅力
その面白さに目覚めてからは年始だけでは飽き足らず、ビデオを借り、原作を読み、DVDを買った。ゴッドファーザーのモデルと言われるジョゼフ・ボナーノの「ゴッドファーザー伝説」も読んだ。
全3部作を通して描かれるのはコルレオーネ家の三男、2代目のドンとなる「マイケル・コルレオーネ」の生涯であるが、映画のタイトルにもなっている真の意味での「ゴッドファーザー」とは初代コルレオーネ・ファミリーのドン、マイケルの父親でもある「ヴィト・コルレオーネ」その人を指していることに異論の余地はないだろう。
時には暴力も辞さないが、義理人情に厚く、家族を愛し、決してドラッグに手を出さない。昔気質のヴィトこそ皆に愛され、尊敬と羨望のまなざしを一身に受けた人物であった。
マイケルは父の呪縛を振り払い、時に偉大な父の影を追い求めながら、信念を曲げることなく組織を巨大化、合法化し、あらゆる敵を排除していった結果、やがて揺るぎない権力を手にする。
しかし……欲するものすべてを手に入れたはずの彼の元には、もはや守るべき家族は無く、実の兄弟すら手に掛けた己の人生には、ただ虚しさが残るのみであった……。
私は彼らの生き様に自分の人生を重ねる。ソニーの短気に、フレドの臆病に、トム・ヘイゲンの冷静さにクレメンザの忠誠心に、そしてテシオの狡猾さに。そしてシーンを回想し、セリフを反芻しながら、飽きることなく「私のバイブル」の再生ボタンに今夜も手を伸ばしてしまうのだ。
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