私的アート探訪
デザイナーのアラーキーです。
最近はコロナ禍の影響で美術館にもなかなか足を運べず寂しい限りですね。絵画には風景画、静物画など様々なジャンルがありますが、私はその中で特に風俗画が好きです。風俗画はその時代の庶民の日常や社会風刺などが盛り込まれていて、その時代の背景を垣間見ることができます。
これまでに足を運んだ美術展の中で一番興奮し、魅入った作品がヒエロムニ・ボスとピーテル・ブリューゲル(父)です。「ブリューゲル バベルの塔展」「ベルギー奇想の系譜展」「ブリューゲル展-画家一族150年の系譜-展」では多くの作品に出会えました。
ボスとブリューゲルの何が好きかって、作品の中に奇怪なキャラクターが数多く登場して楽しませてくれるから。そのキャラクターが一体どんな存在なのか、何を意味しているのか。その愛らしく奇怪なキャラクターに勝手に妄想を働かせる。その時の状況や、その後を妄想すると脳内でキャラクターが勝手に動き出す。萌えます。
ということで。今回は私のお気に入りの作品を紹介したいと思います。
『大きな魚は小さな魚を食う』/ピーテル・ブリューゲル(父)
この作品はボス作とも言われていますが、版画出版社のヒエロニムス・コックがボスの人気にあやかってボス作として出版したのではないかとのこと。とはいえ、ブリューゲルもボスの影響を受けていて「第2のヒエロニムス・ボス」とも呼ばれていたそうです。
私的萌えポイントは何と言っても左上部にいる足の生えた魚。メインの大きな魚をも凌ぐ存在。なぜ足があるのか?魚をくわえてどこに行こうとしているのか?はたまた、中に人間がいるのか……。答えの見つからない妄想が止まりません。
ちなみにこのキャラクターは、バベルの塔展で「タラ夫」としてマスコット化していました。魚の種類、タラなんだ……と思いつつ、作品にはないスネ毛まで生えた可愛らしいマスコット。愛らしさに拍車がかかるし、マスコットとして起用した企画展も凄いと思いました。
『トゥヌグダルスの幻視』/ヒエロニムス・ボス
生死の狭間を彷徨った放蕩の騎士トゥヌグダルスが眠っている間に見た幻想で、背後には右周りで怠惰・激怒・大食・貪欲・邪淫・嫉妬・傲慢の「七つの大罪」が描かれています。この絵はあらゆるところに奇怪なキャラクターが登場しています。嘴がラッパで体が卵型のモンスター、手に箒らしき持ってるフクロウ、その隣の白いモンスター……。テーマは地獄の懲罰なのにキャラクターは悍ましくなく、どこか愛嬌すらあります。キモカワで萌えです!
ボス、ブリューゲルの作品は実は細かいところに隠れキャラが潜んでたりするので、探しながらじっくり眺めると楽しいので是非堪能してみてください。
ボスの描く不思議な世界観やモチーフは彼の死後も模倣の対象となり、16世紀半ばには「ボス・リバイバル」と呼ばれたそうです。絵画も数多くの巨匠たちを模倣したり、影響を受けているように、デザインに関しても古くからある優れたデザインは今も色褪せることなく存在しています。“良いものは残る”とは、どんな作品にとっても言えることだと思います。
モノづくりとしてもっと学び、誰かに残るものを作っていきたいと思いました(道のりはまだまだ遠いです……)。
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