デザイナーの家にあるBlue Noteのジャケット晒す
Webデザイナー/ディレクターのヤスハラタカユキです。
今回はバイクネタではなく、わが家にあるアナログレコードの中から、ステキ!だと思うBlue Noteのジャケットを何枚かご紹介します。といっても、音楽を聴いたり、ジャケットを眺めたりするのが好きなだけなので、ジャズの詳しい歴史やプレイヤーの知識などはほとんど持ち合わせていませんので、細かいツッコミはなしでよろ。
まずBlue Noteについてざっくり説明を。
ブルーノート・レコード(Blue Note Records)とは、ドイツ出身のアルフレッド・ライオンによって、1939年ニューヨークで創設されたジャズ専門のレコード・レーベルのこと。独自の録音方法や、洗練されたジャケットデザインなど、作品に一貫した理念を持ち、ジャズ・シーンに大きな影響を与えた。
言わずと知れたJAZZの超定番にして最高峰でもある、名門レーベルですね。マイルス・デイビス、リー・モーガン、セロニアス・モンク、ジョン・コルトレーン、アート・ブレイキーなどなど、数多くのプレイヤーがBlue Noteからアルバムをリリースしています。音楽はもちろん素晴らしいですが、レコードジャケットのアート性も素晴らしいものがあります。
数々のステキジャケットは、創設者のアルフレッド・ライオンのドイツ時代からの友人であるフランシス・ウルフというフォトグラファーと、リード・マイルスというデザイナーのタッグで、生み出されました。
タイポグラフィがステキ
リード・マイルスの特徴的なデザインといえば、まず大胆なタイポグラフィが挙げられます。ジャケットの全面を覆い尽くすような、斬新なレイアウトにちょっとした遊び心がニクい。
↑(左)Joe Henderson『IN N’ OUT』 リード・マイルスのデザインにおいて特徴的な、文字のなかにトリミングした写真を入れるという手法が使われており、アクセントになっています。文字の中の矢印もタイトルをうまく表してますね。ホワイトスペースの使い方の切れがいいのは、影響を受けたと思われるバウハウスの影響でしょうか。
(右)Art Taylor『A.T.’s. Delight』 リード作が少ないアート・テイラーの唯一のBlue Noteでのリードアルバム。こちらも大胆なタイポグラフィに”手クセ”(笑)な入れ方の写真。カンマやエクスクラメーションマークを効果的に使うのもリード・マイルスの特徴。
もうこの2つ見ただけで「あ、ステキ!」ってなる人続出だと思うのですが!
↑(左)Jackie McLean『Let Freedum Ring』 彼自身はテナーサックスのプレイヤーですが、このジャケットをパッと見てなんとなくジャズっぽいな……と感じるのは、白と黒の細長いものを見るとピアノの鍵盤を連想するからなんじゃないかなと思うわけです。なんだか聴こえてきません?ちなみにピアノはWalter Davis Jr.が弾いてます。
(右)Lee Morgan『The Rumproller』 タイトルの意味は分からないんだけど、Rum(ラム酒)をProwl(求めてうろつく)の組み合わせの造語だとしたら、のたくった文字のデザインも納得の酔っ払いっぷりです。なんとなくNirvanaのNever mind感がありますね。
↑(左)Lou Donaldson『Sunny Side Up』 ルー・ドナルドソンはBlue Noteにたくさんのアルバムを残していますが、その中でも一番好きなジャケット。SunnyでもなくSideでもなくUPを大きく切り出すセンスよ。
(右)Hank Mobley『Dippin’』 これはもう名盤なのでジャケットもさることながら、とりあえず紹介しておきたかった(笑)。タイポグラフィも文字をスライスさせて動きをつけたりと、小技が効いてます。
ダブルトーンやトリミングが大胆な、写真を使ったジャケット
タイポグラフィに加え、リード・マイルスの特徴といえばトリミングの大胆さと、写真をダブルトーンにしたデザイン。これは予算的に4色印刷ができないという事情から生まれたものなのですが、逆にBlue Noteの代名詞にもなっていますよね。
↑(左)John Coltrane『BLUE TRAIN』 コルトレーン唯一のBlue Noteでのリードアルバム。ザ・Blue Noteって感じのジャケットですよね。BLUE TRAINで青かよってベタベタですけど、他の魅せ方が思いつかない説得力。元の写真がどんな画角だったのか見てみたいですが、フランシス・ウルフの写真あってこそのジャケットなのは言うまでもありません。
(右)Grant Green『Nigeria』 こっちはグラント”グリーン”で緑かよ!って思いますけど、ナイジェリアの国旗の緑、グラント”グリーン”の緑で、やっぱり他の色が思いつかない(笑)。
次の2枚はフランシス・ウルフではなくリード・マイルスが自ら撮った写真でデザインされたものです。
↑(左)Sonny Clark『Cool Struttin’』 このジャケットはBlue Noteの作品の中で私が最も好きなジャケットの一つです。洗練されたライフスタイルや街の雑踏など、ニューヨークの都会的な雰囲気がこの脚だけを大胆に切り取った写真で感じさせてくる、伝えてくるという、圧倒的な写真力がステキです。
(右)Wayne Shorter『Speak No Evel』 上のホワイトスペースを取るために肝心のウェイン・ショーターの頭が切られてしまってる、というかそもそも奥さんのほうがメインになってるしと、ちょっと私のデザイン経験では作れない突出したデザインです。キスマークがかわいいっすね。
番外編
バウハウスやスイスのグラフィックデザインに影響を受けていたと思われるリード・マイルスですが、中でもパッと見て「あっヨゼフ・ミューラー=ブロックマンじゃん!」ってなる2枚をご紹介。ブロックマンについてはこちらを読んでいただくとして、どちらも整然とグリッドに並べつつも外した部分を作るという、スイススタイルのデザインの影響を強く受けたデザインと感じます。
↑(左)Horace Parlan Quintet『Speakin’ my piece』 (右)Freddie Hubbard『hub-tones』
どちらも”手クセ”(笑)と白地に細長い黒オブジェクトでジャズっぽさを表現しつつ、一方はリズミカルなハードバップ、一方はスムースなジャズを想像させるデザイン。
以上、個人的傑作ジャケットを何枚かご紹介してみました。
余談ですが、リード・マイルス自身はジャズが全く好きではなかったようで、サンプルとしてもらったレコードをせっせと売ってはクラシックのレコードを買っていたそうです。
そこらへんの一歩引いた視点みたいなものも、言われてみればそうかもと思える部分がありますよね。対象にのめり込みすぎない、ユーザ視点を持ちながらデザインするっというのはけっこう大切なことなので、そういうことも思い出させてくれます。
本当は、自分で作ったBlue Noteジャケットを制作過程とともに掲載しようと思っていたのですが、思ったより長い文章になってしまったので、次回に回すことにします。
ではまた。
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